淡々と東京日記その3

その2の続き・・・

パルコパート3の1階にあるカフェに着くと、ボッシーがこちらに向かって手を振っていた。
彼はもうすでに展示会を見に行ってくれた後だった。
この日初めての見慣れた顔。
しかし彼は僕と違い、渋谷にいてもまったく違和感がない。

他愛のない話をしばらくした後、彼はこう言った。
「明日旨い蕎麦食べに行きません?」

彼は非常に凝り性で、しかもセンスがいい。
仕事柄東京に居ることが多いため、東京での人脈も広く、土地に精通している。これは期待できそうだ。
次の日また連絡を取り合う約束をし、少し予定より遅れて展示会の会場、7階パルコミュージアムへと急いだ。

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ミュージアムというだけあって、会場の内部は催事・物販よりも、プロダクトデザインに焦点を合わせた作りになっていた。

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普段は和の空間の中にあるおはりばこの商品たちも、こうしてニュートラルな空間の中で裸で置かれているのをみると、なんだか心地よい違和感を感じる。
そして、そういう空間の中でもしっかりと静かに自己主張をしている我が商品たちを、少し誇らしくも感じた。

時間が合えば、と言っていたこちら在住のSさんと合流でき、久しぶりの再会を喜び合う。
相変わらず、お元気な方だ。

その後、こちらの友達と待ち合わせをして、晩飯を食べに渋谷の巷にでる。
僕はこれまでに食べたことのないもんじゃ焼きをリクエストしていた。
初めて食べるもんじゃ。焼き方を店員さんにレクチャーしてもらい、わいわい食べているうち、妙にテンションが上がってきて調子に乗ってしまい、飲めもしない酒を頼んでいた。
焼酎の水割り一杯ぐらいなら堪えられるはずだったが、寝不足時のキャパシティをあっさり超えてしまったらしく、店に出てからは足元は覚束なく、立ったまま寝てしまいそうになる始末。

友達に助けてもらい、なんとか浅草までたどり着いた僕は、玄関のロックを開け、這う這うの体で一畳ほどのシャワー室までたどり着き、中途半端に退けた着物が濡れるのも顧みずにシャワーを浴びて、ドミトリーのベッドへ倒れこんでバタンキューした。

次の日朝八時。
着物を着ようと背嚢を開けるも、前日着ていたものとそう変わらない安物の綿朝しかないが、今更仕方が無いのでおとなしく着る。
自転車を返さなければならない時間まではまだ少しある。
最後にちょっと浅草をぐるりとしてみるか、とカマキリ自転車に跨った。

浅草には大衆演劇場が非常に多い。
今話題の若き天才女形、早乙女太一氏の劇団のポスターがそこいら中に張ってある。
ある演劇場、公演の看板にふと目をやると、
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知っている名前が一つ。いや、もう一つ。
牧伸二と、そう、原一平。

ついに本人の口から聞き出すことの叶わなかったジョークの元ネタが、こんなところで判るとは。
寅さんの物真似師、それが「はらいっぺー」。

気分よく自転車を返し、早めにチェックアウトをしたものの、今日の予定は特に決まっていない。
ボッシーからの連絡を待つまでは自由時間だ。
地下鉄の路線図とにらめっこしているうちに、銀座アンティークモールの話を思い出し、僕は銀座までの切符を買った。

ザギン。銀ブラ。大正ロマン。

今更自分の格好が場違いなのは百も承知だが、1日の滞在を経て、僕の魂にはには「旅の恥は掻き捨て」がしっかりと刻み込まれていた。
警備員の立っている立派なビルにあるアンティークモールだって、気にすることはない。
一回り眺めるだけ眺め、値段にため息を吐いて外に出た。仕方がない。ここは天神さんなのではなく、「銀座」の「アンティークモール」なのだ。

下町が恋しくなり、カンダという響きに惹かれて神田に向かった午後1時。
神田川・・・フォーク・・・四畳半・・・。
単純な思考回路で神田に降り立ったものの、さすがに僕のイメージしていた風情はいきなり現れない。

ウロウロしているうちに、道路を挟んでやけに異様な雰囲気を放っているエリアがあることに遠目に気づいた。
僕は、そのエリアの名前が書かれた道路看板の方へ吸い寄せられるように歩いていった。

道路看板には、「秋葉原」と書かれていた。


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