おけいはん問題を考える

京阪電車の祇園祭キャンペーン用ポスターで、イメージキャラクターの「おけいはん」が、青海波紋の帯を逆さまにつけているとして、ニュースになっていました

trd1007171411011-p1.jpg

京阪電車がいうには、「わざと。お洒落の一環」とのことですが、これはさすがに苦しい言い訳です。
記事自体も、「非常識、お粗末」という第三者の声を紹介し、否定的な論調です。

たしかにこれはちょっとお粗末です。
私自身、記事のベクトルにおおむね同意します。
向きに大きな意味を持つ吉祥文様を逆さまに着るのは、狙ってやっていたとしてもいいものではありません。
大手鉄道会社がこれをわざとやってしまうと、誤解を広めてしまう可能性もありますし、会社の信用にもかかわります。


しかししかし。
実際にこういう着方をしている女の子が町を歩いていた場合は、少し見方を変える必要があると思います。

もしあなたが着物初心者で、一生懸命浴衣を着て町へ繰り出し、ワクワクしながらも「変じゃないかな、変じゃないかな」とドキドキしているところへさして「あなたそれ変よ」と言われたなら。
せっかくの楽しい気持ちがぶちこわしになってしまいますよね。
一日中そのことばかり気になって恥ずかしくなり、もう浴衣なんか着たくない!ってなるのではないでしょうか。

「いや、そんなこと面と向かって言う人おらんやろ」

それは甘い。
和服というのは、常に着こなし・着崩れ・間違いを公衆の面前で指摘してくる人間が多い衣服なのです。
なんででしょうか?

・着物には一定のルールがある
・やけに詳しい人が意外に多い
・着物の知識が多い=ステータスな人が多い

指摘する本人は、本当に親切心で言っているのでしょうが、スマートに指摘出来る人はほとんどいません。

だったら間違いに気づかずに恥をかき続ければいいのかって?
いいのです。
言われたところでその日はもう直せませんし、知らぬが仏です。
それよりも、浴衣を着た自分のことを好きになって、もっと和服のことを知ったときに、自分で学べば良いのです。ああ、あのとき間違ってたんやな、と。

かくいう私にも経験があります。
着物を着始めてまだ間もない頃、当時付き合っていた彼女と弘法さんの縁日へ初めての二人着物デート。
アンティークの着物に羽織、袖丈はバラバラ、襦袢は身八ツ口からはみ出ている、なんていう状態でした。
とあるお店の前で立ち止まっていたら、年配の女性が近づいてきて、

「襦袢はみだしてるやん。せっかくの着物が台無しやで」

と親切にも大声で教えてくれました。
彼女は何も言えずうつむいてしまい、私はというと「ああ、そうですね。たしかに。ほんまや。」なんてなんのフォローもできない体たらく。

そこへたまたま通りかかったのが、ロックな着こなしをした、見たこともないほどかっこいい着物カップルでした。
ショートカットの女の子がすかさず、

「ええやんか別に!最初っからちゃんと着れるわけちゃうねんから!かわいいんやしええやろ!」

と、一喝してくれました。
彼女はこの一言で、どれだけ救われたことでしょう。
あの時はありがとう、chokoちゃん


今年の祇園祭でもたくさんみかけました。
左前の女の子、貝の口がニョロンと垂れている男の子、首周りが詰め詰めの女の子、つんつるてんのお兄さん、帯が上がりすぎてる若者などなど。

でもね、みんな素敵でした。
この日の為に浴衣を選び、なれない着付けと格闘して、下駄につまずきながら、ドキドキ胸を高鳴らせてハレの祭りにやってきたのです。
その心意気と非日常感が、祭りの正体なんじゃないのかと思います。

あの子達が、いろんな人から褒められていれば嬉しいです。
和服を着た自分をもっと好きになってくれていたら嬉しいです。
そして、次はもっと綺麗に、格好良く、粋に着たいと思ってくれたなら言うことありません。



今年はもう浴衣を着ましたか?
人ごみは苦手ですが、浴衣姿に溢れかえった人ごみは、そんなに嫌いじゃありません。

もう二度と体験できないはずの夏休みの夜の空気を、こどもに帰って体験しているような気がしてね。

プロフィール

おはりばこ店主

  • Author:おはりばこ店主
  • おはりばこ店主です。
    花嫁さんや成人式・卒業式、七五三などのハレの髪飾りやかんざしを、京都からお届けします。

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索