江戸の粋と京の粋

商品のディスプレイに使うものを探すとき、店主はいつも古道具屋さんを回ります。
京都はいたるところに骨董・古道具屋さんがあり、おはりばこから北大路通りを東に向かうだけでも、4軒くらいお店がありますので、ちょちょく覗いているのです。

中でも巡回率の高いお店が、北大路下鴨本通り東入るにある、古道具屋「あうる」さん。
店内には古道具が所狭しと並べられ、いや、雑然と置かれ、まるで倉庫のよう。中には、いかにも頑固そうな親父さんがくわえ煙草で道具の手入れをしています。

そんなちょっぴり緊張してしまいそうなお店ですが、ここのご主人はいろんなことを教えてくださいます。

先日、髪飾りをディスプレイするための何かを探しに入ったときのこと。
なにか重厚な板みたいなのありますか?と伺うと、床の間の障子を出してきてくれました。
んー、障子かーと思っていると、こんなことをおっしゃいました。

「重厚で木目が荒々しく漆拭きしたような板は、江戸の好みなんや。
京都は軽くてはんなりしたのが粋なんやからこういうのを使ったほうが面白い」

ご主人は、京水屋箪笥を指してこう続けました。

「京水屋は檜の白木を使って、枠には黒柿を使ってるやろ。ごつごつした欅とかはつかわんのや。そういうのは田舎の趣味や」

確かに、京都以外のの民芸品などは、木目や節・瘤などを活かした無骨なデザインの建具・家具が多いですよね。
対して、京都は白木のイメージ。
でも、店主はこれまでどちらかというと前者のものをよくディスプレイに使っていました。
でも、それじゃ髪飾りが負けてしまうと、ご主人は言うのです。

「せっかく京都の花簪を扱ってるんやから、京好みのものも取り入れていかないかん」

店主はこれまで、江戸の粋コンプレックスといいますか、京都の雅の粋というものより、江戸の男気あふれる荒々しい粋に憧れていたところがありました。
京都の粋は、とても洗練された独特の魅力を持っているのですが、どこか貴人・茶人・文化人だけが楽しむことを許された、雲の上の存在だったのです。
店主はパンピー・ばりばりの町人ですから、町人が洗練して行った江戸の粋というものの方がカウンターカルチャー的な感じで親しみやすかったのです。

もしおはりばこが中京や東山に店を構えていたら、周りの雰囲気からして京好みのディスプレイを余儀なくされていたかもしれませんが、ここは自由のエリア紫野。
ここは一つ、京の粋と江戸の粋を同居させてみようかと相成ったわけです。

障子を手に入れた店主は、その足で京の紙司柿本さんへ行きました。
店主の旧知、「紙屋のトモちゃん」と一緒に選んだ麻の落水紋紙を購入し、障子に張ることに。

そうしてできたのがこちら。
040201.jpg

写真では分かりにくいですが、鴇色の和紙と生成りの和紙を、市松にして張っています。

これまで使っていたのがこちら。
040202.jpg

赤と黒の色気のある江戸好みの友禅和紙です。

全体を眺めるとこんな感じ。
040203.jpg


統一感には欠けますが、日々実験実験。
なんとか収まるには収まりました。

これからちょくちょく、京の粋というのを自分の身丈に合わせて取り入れて行きたいなあ、なんて思わないこともなく。


いやあ、「粋」の道は一日にして成らずやね。


コメント

not subject

おひさしぶりで~す!

ライトの加減かもしれませんが、
今回新設されたほうが、かんざしが見やすく、
とても映えますね!

うちも市のディスプレイ考えるのに、
あちこちこれから回るので、お店の情報いただけて
感謝ですヽ(´ー`)ノ

not subject

江戸と京都だとだいぶ違うものなんですね。
でもどちらも魅力的。“みんなちがって、みんないい。”ですね。

「粋か粋じゃないかと考えてるうちは無粋なんだよ」
その言葉を聞いた時に目から鱗が落ちたと同時に
とっても楽な気持ちになったのを記憶しています。
そんな言葉がサラリとでてきたおじさまは確かに粋でした。

not subject

お久しぶりです。こちらには初めてコメントさせていただきます。ブログ楽しく拝見させていただいております。日々「粋」を探求されていらっしゃる御様子。毎日の工夫が人を育てるのですね。江戸指物は、確かに木目を生かした漆拭きですが、姿見、化粧台、乱れ盆など、その分細身ですっきりとした印象を持ちます。どちらかというと、華奢という言葉があてはまるかしら。江戸は畳の大きさも京都とは違うでしょ?その空間に収まるのに、ちょうどいい塩梅になっているのです。江戸で「縞」が好まれたのもしかり。縞の太さ如何で、「粋」にもなれば「野暮」にもなる。私もいつか「縞」が似合う女になりたいと思ってきましたが、さあ、どうでしょうか。小物は京都が好き。隠れた派手好みです。全部「粋」にしたら、それこそ「野暮」ってぇなもんで。いつかお店に伺ってみたいですね。店主様のお着物姿、とくと拝見したいものです。これからも楽しいブログ期待しております。

not subject

たしかにおっしゃるとおりですね。

ものすごく難しい問題なのですよ。そこが。

ご店主様の試行錯誤はきっと良い結果をもたらすはずと思います。

わたくしも、どうすることが一番いいのかを日々考えておりますが、難しい。
白木のすぱっとした京都の本物にしてしまうことが一番ベストのようですが、それでは、町方さんは店に足を踏み込む勇気がなくなってしまいますし、町方風情をすると雑多になる。雑然とした様を見せつつも、京都の格を表現するべきところでは表現しなければ商いが疑われる。ほんとにやっかいなことですが、わたくし達には生涯課題となることだとおもいます。
わたくしはただいまちょいとの工事を店外にしはじめてもらっているのですが(駒寄せの端っこを増設)、それは商いの正面の脇にくるものなので檜の白木にしました。しかし、増設部分が店の正面であればそこには檜をつかわなかったでしょう。今回のわたくしの選択も、それでよかったのかわるかったのかはわかりませんが、まずはなんとかやってみることで先へ進むしかないのですな。

がんばってくださいな。お互い、難題かかえておりますが、おもろい道楽ではないですか?

たぶん、そんなどうでもいいことに本気になっていられることが「粋」なのだとおもいます。でも、わかってもらえるかな、この「粋」ってやつを、自分の贅沢の為にするんじゃないとことろが、京都の「粋」の本質なんですけどね。

not subject

こももこさん

お久しぶりです。

髪飾りは、壁一面に取り付けて部屋の中ほどは空けました。
部屋も広く、見やすくなったと思います。
なかなかディスプレイって難しいですよね。
色々回って素敵なお店を見つけてください。


しらたま様

「粋か粋じゃないかと考えてるうちは無粋なんだよ」
まさにその通りですね。
粋とは見た目のことではなく、心意気のことですから。

粋を語ると、野暮になる。

まさに今の私のことです。


くう~様

粋という日本独特の美意識には、ほとほと感心させられます。
こてこてでもなくあっさりでもなく、スマートに見せて色気もあり、主張しすぎずに存在感がある。
考えてできるものではないのでしょうね。
日々完成を磨いていくのみ。

いつかお店にお越しになる日までに、少しはしゃれた人間になっておきたいものです。


店番さま

さすがですね、良く研究なさっています。
とても勉強になります。
雑然とした趣味の空間に、格を見せるのは容易なことではないですよね。
私はついつい趣味で固めてしまいそうになるのですが、そろそろそこから一歩踏み出して次の高みを目指してみます。

ちょこっと工事なさってるのですね。
また完成が楽しみです。
近いうちに覗きに参ります。

明日は花見です。
もしお時間が合えばぜひお越しください。
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    花嫁さんや成人式・卒業式、七五三などのハレの髪飾りやかんざしを、京都からお届けします。

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