淡々と東京日記その1

ダブルデッカーの最前列通路側、アイマスク代わりに達磨柄の手ぬぐいを頭に巻き、夢と現の間を行き来する午前3時。
第三水曜・木曜の連休を利用し、おはりばこが出展している東京渋谷の催事に向かうため、という名目の東京見物のため、僕は5年ぶりの深夜バスに揺られていた。

左端の男のイヤホンから漏れ聞こえてくる、大塚某とかいう歌手の媚びた歌声が頭の中にこびり付き、結局寝たのかどうか分からないまま新宿西口で降ろされた朝7時。

初めて東京に降り立つおそらく多くのお上りさん達と同じく、僕は箱庭のような区画に聳え立つ嘘臭い背高のビルを見上げた。
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化繊を噛んでいよう安物の麻の単を着流し、裸足に紬の鼻緒を挿げた白木の桐下駄。背高ビルの下に立つ粋からは程遠い自分の姿に、今更ながら場違いであることに気づき、僕はなぜか背嚢から柿渋と藍で染め分けられたひざ下まである前掛けを取り出して、それを腰に巻いてから煙草の一本を呑んだ。

初めての東京。

僕は背嚢を背負い、明けたばかりのひんやりとした新宿の空気の中を、築地市場に向かう地下鉄に乗り込むため歩き出した。

浅草の安宿を予約した僕が築地市場へ向かった理由は、朝飯を食べるためだった。1泊2日の旅行、尋常であれば食事は6度のみ。
1度たりとも無駄な食事は摂りたくなかった。せっかく東京へ行ったのに、どこでも食べられるもので腹を満たすなんてバカなことだけはどうしても避けたかったのだ。

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築地市場の下町の台所然たる雰囲気は、期待通りだった。
通りに面しては、アジアで見かけたような一坪店舗が軒を連ね、路地奥にあっては、荷降ろしされたばかりであろう魚介類が所狭しと並べられている。僕は入り組んだ路地の中にある、一軒の海鮮丼屋のカウンターに座った。

メニューを決めるのは苦手だ。
人前ではいつも血液型の所為にしているが、本当のところはなんのことはない、全部食べたくなってしまい決められないだけのことだ。
ここは粋の町、江戸築地。
着流しでメニューを迷うとはなんと野暮なことかと言い聞かせ、品書きを一瞥した後、その昔地元の安っぽいチェーン店の寿司屋で好んで食べていた、ネギトロイクラ丼をカウンターの親父に注文した。

出来上がりを待っていると、「アラ汁お待ち!」という声と共に、隣のカップルに二つのお椀が供された。
僕は品書きをよく見なかったことを後悔した。うまそうにアラ汁を啜る二人を見て、僕もそれを食べたくなったが、このタイミングでアラ汁を追加するのはなんとなく野暮な気がして、やせ我慢をした。

出されたネギトロイクラ丼は、昔食べたプラスチックの丼に入った偽物のそれとは違い、とても旨く感じられた。
濃厚な味、量も十分な舎利。
汁物が欲しくなったが、それでも僕はアラ汁を頼まなかった。たかが汁物一つに逡巡しているその時の自分が、何よりも野暮だということにも気づかずに。

無事に寝不足の腹を満たした僕は、死んだ父がよく食後に言っていた「はらいっぺー」という意味不明な冗談を口ずさみながら、地下鉄へと続く階段をカンカンカンと降りて行った。
はらいっぺー、はらいっぺー♪

チェックインまではまだまだ時間があるけれど、とりあえず宿屋に荷物を預けてぶらぶらするか、と浅草に降り立った10時前。
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雷門の前にはたくさんの人だかりと、それを御するカラーコーンとトラポール。
到着早々運がいいぞ、どうやら何かの祭に出くわしたようだ。
黒山の熱い視線の先には、勘亭流で町名が書かれた法被を着た男衆がわらわら屯し、今まさに何かが行われるといった風情。
しばらく様子を見ていると、大きな歓声が沸き起こった。

さあ江戸の下町、京都のおとなしい祭とは違う気合の入った祭が始まるぞ。
ワクワクも最高潮に達した僕の眼に飛び込んできたものは、神輿でも観音様でもなく、なんとフォーミュラーカー、所謂F1カーだった。
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コメント

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最後の画像、スタッフの後姿・・・
もしやそのロゴ、レッドブル?

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お疲れ様です。

あら汁!! そこはテレを捨てて頼んで置いた方が・・・・・。

京都代表!!がんばれ~っ!!!

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次は徳島でもして欲しいけど、百貨店ないや。

東京、築地はいいですね。もう無くなるとか?
寂しいですよね。

東京タワーはみられました?
私はいつみてもステキだなと感動してしまいます。

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しらたま様

さすが、しらたまさま。
よくお分かりでしたね。


名無しの八兵衛様

おっしゃるとおりです。
まだまだ小さい人間です。


ともあき様

徳島に百貨店を作ってください!

築地問題、大変ですね。
アレを移すなんて、無茶な気もしますが・・・色々事情があるんでしょうね。
東京タワーは見に行ってませんよ
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