淡々と東京日記その4

その3の続き・・・

東京という町は、エリアごとの色分けがはっきりしているとは聞いていたが、まさにそのとおりだった。
いわゆるオタクの人はもちろん、アジア系観光客、「コンニチワ!!」とすれ違い様に愛想を振りまく白人の女の子の一団、店頭でラップに乗せて商品を紹介する眼鏡屋さん、頭のてっぺんからもれた空気のような声でビラを配るメイドさんなど、一人着物を着て歩いている僕が場違いではないような錯覚に陥ってしまうほどカオスだった。

ドンキホーテに迷い込み、エスカレーターで階を上がっていくと、うわさのメイド喫茶が現れた。

「お帰りなさいませーご主人様ー」

帰ってきてもいないし、ご主人様でもなんでもない男性客達が、メイドさん達のテンションとは裏腹に、俯き加減でどんどんカフェに入っていく。

僕は、思い切ってエントランスをくぐり、小さな個室に案内されると、そこには小さくてかわいらしいメイドさんがちょこんと座っており、恥じらいながらも上目遣いでコーヒーを給してくれ、僕もはじめは乗り気ではなかったのだけど、次第に打ち解けるうち、店が終わってから会いませんかと言われ、その晩は彼女のワンルームに泊めてもらうことになった、というのはもちろん嘘で、あっさりと素見して下りのエスカレータに向かい、社会見学を終えた。

この旅の供にと、出発前に本棚から適当に信玄袋に詰め込んだ文庫本が、昭和初期の銀座を舞台にした、カッフェーの給仕と作家の退廃的な恋愛を描いた小説だったのだが、まさかその頃の人たちも、給仕と客の擬似恋愛が、ラジオ部品の問屋街で展開されるなんて夢にも思わなかったことだろう。
歴史なんて、どう転がるか分かったもんじゃない。

しばらくゲームセンターで時間を潰していると、ボッシーから携帯に連絡が入った。
「仕事が片付いたので、飯に行きましょうか」
僕は、待ってましたと地下鉄に乗り込み、目黒へ向かった。

目黒に到着し、ボッシーと落ち合う。
前日聞かされていた目黒の蕎麦屋は、残念ながら昼間の営業をやめてしまったらしく、僕たちは第一候補は諦めざるを得なくなってしまった。
しかし彼はすぐに第二候補を挙げ、タクシーを拾うと運転手に恵比寿と告げた。
デートで予定が狂ったとき、二の手三の手をすんなり用意できる男がどうやらモテルらしい、とどこかの何かで読んだことがある。

この男、やはりデキる。

ボッシーが連れて行ってくれたのは、落ち着いた大人の雰囲気の蕎麦屋。
一品物や酒が充実しており、アテを肴にチビチビやり、〆に蕎麦を啜るという、江戸の粋人の隠れ家のような店だった。
焼き味噌、そばがき、鮪のヅケなんかをつまみながら、しっぽりと時間を愉しんだ。

プライベートではあまり商売の話をしない僕だが、彼も事業を興しているだけあって、商売のやり方やあり方について小一時間ほど話し込んだ。
業種は違えど、立場の似ている者同士、普段は心の奥底にしまっているようなこともすんなり話し、アドバイスしあい、これまでにはない濃密な時間をすごすことが出来た。
歩んできた道はまったく違うが、同じく商売を志す同志であり、同じく着物を愛する者同士であり、刺激しあえる友でもある。
〆に、粗めに挽いた十割蕎麦を啜り、大満足で店を出た。

ボッシーと別れ、店に立つために渋谷に向かった午後6時。
この日も変わらず渋谷は人が多い。二回目とあって、まっすぐパルコに到着できた。
現地の友達、お客さん達との楽しい時間。
接客をするつもりが、逆に色々励まされ、応援され、なかなか場を離れることが出来ず、結局新幹線の終電ギリギリまで店に立っていた。

最後に駅まで見送ってくれた友達に別れを告げ、一番前の車両の一番前の席の右端に座った。
2日間歩き回り、ろくすっぽ寝ていないにもかかわらず、興奮した脳は眠ることを許してくれない。
東京は広い。
さあこれから、というときに帰らなければいけない旅ほど名残惜しいものはないが、幸いすぐに上京の機が待っている。

さて次はどんな楽しい出会いがあるかしらん、と早くも次の旅に期待しながら、僕はシートをゆっくりと倒した。

コメント

not subject

おつかれちゃん!!

メイド喫茶にいったのか!?萌えたか??社会科見学ですな。

not subject

ぁれですな。

京都の若旦那ときたら、つぎは、なんか書ぃたれってなかんじで人生すすめていくっちゅうわけですな。

読ませていただいているうちに、なんだかおもしろくなってきました。

ご出版成就の暁にはお祝いもってあがりまするぅ~

not subject

名無しの大地

結局入れず仕舞やったわ。
今度関西に来ることがあったら、日本橋にでもいってみようぜ兄弟。


うさぎ屋アルバイト兼店番様

そんな大層なもんやおへんえ。
行き当たりばったりってのが好きな性分なんですわ。

駄文を散らかすのは、せめてここだけにさせてもらいますわー。
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