男着物のドレスコードを洋服に置き換えてみると【その1】

衣服ってのは、寒さを凌ぐだけのものではなく、自分の意思や立ち位置を示す役割も果たしているのは皆様ご周知のところ。
大人になればなるほど、その意味合いは強くなってきます。

普段着・仕事着・お出かけ着・お呼ばれ・フォーマルなど、TPOにあわせた着こなしが求められます。
九分九厘の男性が洋服を着ている現代ですので、洋服のTPOは節目節目にそれとなく身についていくものですが、和服の場合、特に人口の少ない男性着物となりますと、着ているほうも見ているほうも分からないもの。
誰もわからないんならそれっぽくしときゃいいよ、となりますが、やはりせっかくですから、その場に相応しい拵えでもって臨みたいですな。

そんなわけで、「形」「色」「素材」の三要素から、男性着物のドレスコードをディテールごとに洋服に置き換えて考えて見ましょう。


先にお断りしておきますが、毎度の通り以下は店主の独断・思い込みを過分に含んでおります。
「間違ってるよ!」というごご指摘、「このほうがいいぜ!」というご意見は大歓迎です。


■羽織→ジャケット

女性のそれとは違い、男性着物において羽織は非常に大きな意味を持ちます。
江戸時代なら、丁稚・手代は羽織の着用は許されず、番頭以上になって初めて羽織を着ることが出来ました。つまり、地位責任のある一人前であることを周りに示す役割があります。

五つ紋黒羽二重の羽織→モーニング・燕尾服
色無地紋付羽織→背広
紬羽織→ちょいとカジュアルなジャケット


■足袋・羽織紐→ネクタイ

草履・下駄という履物の特性上、足袋の色は重要な意味を持ちます。
色によって、格をあらわします。
羽織紐も、ポジション的にはネクタイと同じではないでしょうか。

白足袋、丸組白羽織紐→白ネクタイ(慶事)・黒ネクタイ(弔事)
黒・紺足袋、色つき組紐羽織紐→小紋・ドット柄ネクタイ
柄足袋、無双羽織紐→柄ネクタイ
地下足袋→ブーツ


■履物→靴

代わり映えしない男着物の中にあって、個性を出せる数少ないポイントです。
まして、履物を脱いで屋内に入る文化ですから、余計に足元は見られます。
下足番になめられないよう、まずは履物にお金を回しましょう。

雪駄→革靴
竹皮の畳表に梵天鼻緒、裏には皮が貼ってあって踵には尻金がついている。
余計な足音を無くすために千利休が考え出した履物。これが収まりよく似合うようになるには、貫禄が必要です。
最も格が高いのが白梵天鼻緒の畳表。
フォーマル仕様です。草履の足音はスタッカートで!

変り素材草履→革靴
エナメル、蓑虫、ホースヘアなどの草履は、畳表を履くほどではないけど下駄ではちょっと失礼だな、というときのおしゃれにもってこい。一足持っておくと便利です。

下駄→普段履き
日常に履くならやっぱり下駄。台と鼻緒の組み合わせで、いろんな着こなしが楽しめます。
白木・塗り・竹・焼・彫・印伝・紬・・・考えるだけでウキウキするのが、下駄のロマンです。

草鞋→スニーカー
長距離を歩くことを目的に作られているという共通点から、近いポジションだと思われます。
藁で足首をくくり付けるタイプの草鞋、一度履いたら病み付きです。
足首で固定するため、和装の履物の中で一番足が痛くないんです。ずっと畳の上をはだしで歩いているような感覚です。


■袴→ベスト

はい、独断です。スリーピーススーツのベストね。
袴のポジションはなかなか難しい。
羽織なしで袴を着けることもあれば、袴なしで羽織を着ることもある。
第一礼装には欠かせないものだけど、書生さんだって袴を着る。
いずれにせよ、クラシカルなお武家さんアイテムですので、「男っぷりが上がる」という点で洋装のベストを当てはめました。異論歓迎。


■帯→ベルト+シャツ

洋装のベルトに比して見える面積が大きい帯は、趣味や立ち位置を示す大きな要因です。
用としてのベルト、観としてのシャツといったところ。
長着・履物並みに腐心すべきところです。
TPO的には、

綴の帯→ドレスシャツ・ワイシャツ
紬の帯→ボタンダウン
染めの帯→カジュアルシャツ

くらいでしょうか。
更紗の帯なんかは、アロハシャツといったところ。


■提げ物→腕時計

帯周りを飾る提げ物は、ステータスを表します。
印籠ならお侍、煙草入れなら商家の番頭以上が許されたもの。
どちらも薬入れ・喫煙具としての用具以上の意味を持っていました。
瀟洒な装飾が施され、趣味を共有する階級への見栄の意味合いが大きいという意味で、腕時計が当てはまるのではないでしょうか。

煙草入れ・懐中時計・印籠→腕時計
根付・緒締め→腕時計のディテール

提げ物について語りだすと止まらなくなる為、これはまたの機会に。


■家紋→?

和装のドレスコードにおいて家紋の役割は小さくありません。
自身が公的な立場にあることを示すもので、家紋のあるなしでTPOは大きく変わってきます。

五つ紋は別格。染め抜きの日向紋で、よっぽどのことが無ければ身に着けません。
三つ紋、一つ紋は縫いつけ。現代では三つ紋はほとんど用いられず、一つ紋がメジャーです。
紋がついていれば、ちょっと控えた立場の格の高い場所でも行くことが出来ます。


さて、ここまできて大事なものを飛ばしていることに無いことに気づきました。
長着、いわゆる着物本体です。

これって洋装で言うところのなににあたるのか。
また、素材・色によってどのような格の違いがあるのか。
そして、店主は実際どう使い分けているのか。

長くなりそうなので、次回のお楽しみということで。

コメント

なるほど新発見

がっつり読みました!
すごくいいですっ。「うんうん。」と納得。新発見。
袴→ベスト。には、なるほどっ!とうねりましたわっ。

男性着物にも、女性着物に負けない多様な魅力があるって
改めて思いましたっ。

家紋のお話、楽しみですわっ。

not subject

>白足袋、丸組白羽織紐→白ネクタイ
白足袋、丸組白羽織紐→白ネクタイ(慶事)・黒ネクタイ(弔事)
となさってはいかがでしょうか?

以前、どちらかで「弔事に白足袋は黒い靴・靴下の中で目立つので黒足袋を履く」という方がおいででしたが、私は白足袋がふさわしいと思います。
学生さんの制服だって白い靴下の学校もあるわけですし。。。
(私の学校は全部靴下白だったので、祖父の葬儀では白い靴下で参列しました)

not subject

興味深いお話ありがとうございます!
何回読んでもおもしろい。
大地さん同様、袴→ベストにはなるほど!です。

次回も楽しみに待ってます!

not subject

大地さん

袴→ベスト、ご賛同頂きうれしいです。
袴って難しいですよね。
しじらの袴を手に入れたのですが、どのように着こなそうか思案中です。


りお様

ご意見ありがとうございます。
確かに
>白足袋、丸組白羽織紐→白ネクタイ(慶事)・黒ネクタイ(弔事)
ですね。訂正しておきます。

弔事には白足袋が相応しいと私も思います。
ただ、お通夜の場合は極力目立たない全体的に薄暗い格好がいいのかな、と思います。
私もご近所のお通夜はこげ茶お召し+こげ茶羽織+黒足袋で出ました・・・。


丁髷をした散髪屋さま

丁髷さまは袴がよくお似合いになりますよね。
なんといっても丁髷ですから。
これからもカジュアルお武家コーデ、楽しみにしていますよ!

not subject

お返事ありがとうございます。
そして、ご対応もありがとうございました。

最近は通夜にも喪服を着てうかがう人が多いのですが、
「通夜へは取りも直さず駆けつける」ということから喪服で伺うことを
「故人が亡くなることを準備して待っていた」と受け取られかねず
嫌う方もいらっしゃいます。
お香典に新券を包むのを嫌うのと同じことですね。
なので、ご近所のお通夜はおっしゃったいでたちで問題ないのでは
ないかと思います。
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